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環境犯罪取締法上の課徴金――中堅企業・大気汚染事案にも課す

  • ニュースレター
  • 2026.05.06

韓国気候エネルギー環境部(以下「環境部」といいます。)は、2026年2月12日、無許可排出施設の運営および防止施設の未稼働により、特定大気有害物質を違法に排出したD社に対し、約40億ウォンの課徴金を賦課しました。

 

これは、「環境犯罪等の取締り及び加重処罰に関する法律」(以下「環境犯罪取締法」といいます。)の適用開始以来、環境部が「大気環境保全法」違反を根拠として、中堅企業に対し数十億ウォン規模の課徴金を課した初の事例であり、環境規制リスクがもはや例外なく急速に拡大していることを示すものといえます。

 

従前、環境犯罪取締法上の課徴金は主として水質分野を中心に適用されてきましたが、大気分野にも本格的に拡大している点、また、大企業に限らず中堅企業に対しても高額の環境犯罪課徴金が賦課され始めている点には、十分留意する必要があります。このため、製造業、石油化学業、廃棄物処理業その他これらに関連する事業場を運営する企業においては、企業規模を問わず、直ちに自社の環境コンプライアンス対応体制を点検・見直すことが求められます。

 


1. 環境犯罪取締法上の課徴金制度および賦課対象

2. 課徴金の算定メカニズム

3. 主な課徴金賦課事例

4. D社事案の詳細分析

5. 実務上の示唆および企業の対応戦略


 

1. 環境犯罪取締法上の課徴金制度および賦課対象

 

環境犯罪取締法は、「大気環境保全法」や「水環境保全法」等の個別環境法令において禁止されている汚染物質の違法排出その他の重大な環境犯罪について、刑事処罰を加重するとともに、さらに行政上の課徴金を賦課することにより、環境犯罪に対する抑止力を強化することを目的としています。

 

具体的には、環境犯罪取締法第12条第1項は、以下の行為を課徴金の賦課対象として定めています。

 

特定大気有害物質、特定水質有害物質、指定廃棄物等を違法に排出した者(第1号)

測定機器を改変し、稼働させず、又は虚偽の測定結果を作成した者等(第2号)

化学事故予防管理計画書等について虚偽・不正の作成・記録・提出を行いながら、人体急性有害性物質、人体慢性有害性物質、生態有害性物質を違法に排出した者(第3号)

有害化学物質の取扱基準に適合しない管理を行うことにより、許可物質・制限物質・禁止物質を排出・漏出させた者(第4号)

許可・承認・届出、又は変更の許可・承認・届出を行わないまま排出施設を設置・運営し、汚染物質を排出した者(第5号)

防止施設・排出施設を正当な理由なく正常に稼働させず、残留性汚染物質の排出許容基準に違反した者(第6号)

 

 

2. 課徴金の算定メカニズム

 

環境犯罪取締法上の課徴金は、単なる定額の罰金ではなく、以下の算式に従って算定されます(同法第12条及び施行令第3条、「環境犯罪等の取締及び加重処罰に関する法律に基づく課徴金賦課基準等に関する告示」等)。

 

 

違反賦課金額 = 基準賦課率 + 違反行為ごとの加重値 + 違反期間ごとの加重値

 

 

浄化費用=汚染物質の除去費用 + 現状回復費用

 

浄化費用の範囲には、汚染物質の除去費用、原状回復費用、およびこれらのための調査・設計・検証費用がすべて含まれます。もっとも、汚染物質を除去することができない場合又は除去の必要がない場合、事業者が自発的に浄化の意思を表明し、環境部長官の承認を受けた場合等には、浄化費用が免除又は留保されることがあります。

 

減額金額=自主申告による減免 + 裁量による減免

 

自主申告減免の場合、違反事実を認識してから直ちに申告し、かつ是正した者を対象とするものです。自主申告の時期、調査への協力度等を総合的に考慮した上で、違反賦課金額に対する減免の程度が決定されます。

 

これに対し、裁量減免は、違反賦課金額が算定され、減免を受けた者を対象とするものです。被処分者の財政状態、違反の軽微性、被害の軽微性等を総合考慮し、違反賦課金額の20%を上限として追加的な減額が行われます。

 

課徴金審議委員会

 

課徴金審議委員会は、委員長(監査官)1名を含む15名程度(うち民間委員5名以上)で構成されます。同委員会では、課徴金を賦課するか否か、最終的な賦課額、違反賦課金額に対する減免、浄化費用賦課の可否およびその金額等について審議が行われます。

 

 

3. 主な課徴金賦課事例

 

環境犯罪取締法に基づく課徴金の賦課は、2020年11月10日の同法施行令改正により、課徴金賦課権者が地方政府(市・道知事)から中央政府(環境部)へと変更されて以降、本格化しました。

 

この改正後、環境部は初めて、2021年11月22日、Y社に対し、製錬所の操業に際して河川上流部へカドミウム等の重金属を含む汚染排水を違法に排出したことを理由として、約281億ウォンの課徴金を賦課しました。この事案では、関係役職員等に対して環境犯罪取締法違反等を理由とする刑事訴訟が提起されましたが、カドミウム流出について故意性が否定され、無罪判決が言い渡され、現在確定しています。これに対し、当該課徴金賦課処分の取消しを求める行政訴訟の第一審では、違反者に故意又は過失がないとしても、カドミウムの流出が操業活動に起因するものである以上、課徴金賦課は適法であるとの判断が示されており、現在、控訴審が係属中です。

 

また、別の事例として、環境部は2025年8月28日、H社に対し、フェノール及びフェノール類を含む排水を違法に排出したことを理由として、約1,761億ウォンの課徴金を賦課しています。これは、環境法違反に基づく課徴金としては過去最高額に当たるものですが、環境部は、会社側による自主申告および調査協力があった点を考慮したものの、環境犯罪取締法に基づき、売上高や違反期間等を踏まえて課徴金を加重したものとみられます。なお、関連する刑事訴訟においては、水環境保全法違反の点につき第一審および第二審で有罪判決が言い渡されており、現在、上告審が係属中です。

 

 

4. D社事案の詳細分析

 

ア. 事案の概要

 

D社は、木質フローリング材等のボード類(MDF、PB)を製造する中堅企業であり、本件課徴金は、以下の2つの違反行為を対象として賦課されたものです。

 

(1) 無許可排出施設の運営

 

D社は、2020年11月から2022年10月までの約2年間にわたり、木材乾燥施設に投入される「重油(バンカーC油)」に、廃棄物である廃木粉(サンダー粉じん、バッグフィルター粉じん等)を混合して熱源として使用していました。その過程で、シアン化水素、ホルムアルデヒド、塩化水素等の特定大気有害物質が、「大気環境保全法」上の設置許可対象基準を大幅に超えて排出されていたにもかかわらず、必要な設置許可を受けないまま当該施設を運営していました。

 

このような無許可排出施設の運営は、「大気環境保全法」第23条第1項に違反して、許可を受けずに設置した排出施設を運営し、汚染物質を排出したものに当たり、環境犯罪取締法第12条第1項第5号アに基づく課徴金の対象とされました。

 

(2) 大気汚染防止施設の未稼働

 

また、D社は、ろ過集じん施設のろ布の空隙が目詰まりすること等を理由として、焼却炉を稼働させながらも、大気汚染防止施設の中核的構成要素である半乾式反応塔(SDR)を2013年11月から2022年4月までの約9年間にわたり稼働させていませんでした。その結果、塩化水素が排出許容基準(12ppm)を超え、最大31.3ppmまで排出されたとされています。

 

このように、排出施設の稼働に当たり防止施設を稼働させない行為は、大気環境保全法第31条第1項第1号に違反するものであり、環境犯罪取締法上の違法排出に該当することから、環境犯罪取締法第12条第1項第1号アに基づく課徴金の対象とされました。

 

イ. 課徴金算定の結果

 

 

*課徴金の対象となった違反行為と同一の行為について、「大気環境保全法」、「水環境保全法」等の個別環境法令に基づく罰金、課徴金、過料又は排出賦課金等が既に賦課されている場合には、その金額に相当する額が本件課徴金から差し引かれます(環境犯罪取締法第12条第5項)。

 

 

5. 実務上の示唆および企業の対応戦略

 

ア. 中堅企業・大気分野への制裁拡大

 

今回のD社事案は、環境部が初めて、大企業にとどまらず中堅企業に対しても数十億ウォン規模の高額な環境犯罪課徴金を賦課した事例です。これまで、環境犯罪取締法上の課徴金は主として「水環境保全法」違反を理由として賦課されてきましたが、本件は、特定大気有害物質の違法排出という違反行為に対し、「大気環境保全法」違反を根拠として課徴金が賦課された最初の事例でもあります。

 

この点からすれば、環境部は、環境犯罪に対する制裁を本格的に中堅企業および大気分野へと拡大していく方針を明確にしたものと評価することができます。

 

したがって、水質汚染物質を排出する事業場を運営する企業に限らず、大気汚染物質や廃棄物を排出する事業場を有する企業、又は化学物質を取り扱う事業場を運営する企業においては、企業規模を問わず、法令違反の有無を改めて本格的に点検する必要があります。

 

あわせて、2025年3月25日の環境犯罪取締法改正により、「残留性汚染物質管理法」および「環境汚染施設の統合管理に関する法律」に基づく排出施設についても、環境犯罪取締法の規律対象として新たに課徴金賦課の対象となった点には、特に留意が必要です。

 

 

イ. 先行的・包括的・戦略的対応の必要性

 

D社事案は、「コスト削減のための環境法令違反」という実務上の慣行が、今や数十億ウォン規模の課徴金という現実的なリスクに直結し得ることを示しています。

 

このような法的・経営的リスクを回避するためには、何よりもまず、各企業において先行的かつ包括的なリスク診断を含むコンプライアンス体制の構築が必要であると考えられます。具体的には、排出施設に係る許可・届出状況の全面的な点検、防止施設が正常に稼働しているかの確認、測定記録の適正性の検証、廃棄物処理の適法性の確認等を、定期的に実施することが求められます。

 

さらに、潜在的な法令違反の可能性が認められた場合には、直ちに法律専門家等と協議の上、想定される刑事上の制裁および課徴金の規模を正確に把握し、対応戦略を策定することが重要です。特に、課徴金は売上高、違反期間、浄化費用等の影響を受けるため、早期に是正措置を講じて違反期間を短縮し、あわせて浄化費用(汚染物質の除去や原状回復等に要する費用)を把握することにより、賦課される課徴金額を可能な限り抑制することが有利となり得ます。また、自主申告や調査協力等の積極的な対応を通じて、減免を受ける費用を最大限確保する方策についても、併せて検討することが考えられます。

 

弊所の環境規制対応センターは、水質・大気・廃棄物・化学物質および土壌汚染その他の環境構成要素に関する幅広い課題を取り扱っております。豊富なアドバイザリー実績に加え、政策・制度、技術・産業に対する深い理解を踏まえ、環境規制に関連して企業が直面し得るさまざまな課題を事前に把握し、先行的に対応しています。当センターは、環境分野に専門性を有する専門家と、環境関係機関において多様な実務経験を蓄積した専門人材によって構成されており、環境分野における法的リスクに関し、全過程を見据えたリーガルサービスを提供しております。ご不明な点やご相談事項がございましたら、どうぞお気軽に弊所までお問い合わせください。

 

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