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【韓国】地方選挙の結果による企業規制環境の展望

  • ニュースレター
  • 2026.06.17

PART I   地方選挙の総評および今後の政局展望

I. 2026全国同時地方選挙の総評

II. 今後の政局展望

 

PART II   分野別主要規制懸案の展望

I. 金融・資本市場分野

II. 公正取引分野

III. 租税分野

IV. 労働分野

Ⅴ. 司法改革

VI. 検察改革


 

PART I   地方選挙の総評および今後の政局展望

 

I. 2026全国同時地方選挙の総評

 

選挙結果の概要

 

2026年6月3日に実施された第9回全国同時地方選挙の結果、与党「共に民主党」は李在明(イ・ジェミョン)政権発足から1年を経て行われたいわゆる「ハネムーン選挙」において、「半分の勝利」を収めました。民主党は16の広域自治体長(知事・市長)選挙で12選挙区で勝利し、広域・基礎議会においても多数の議席を確保しました。一方、「国民の力」は当初の懸念とは異なり、ソウル・大邱・慶尚北道・慶尚南道を守り切り、国会議員補欠選挙ではむしろ善戦したとの評価を受けています。全体としては民主党の勝利と位置づけられますが、補欠選挙においては野党が与党の一方的な勢いに歯止めをかけた格好となりました。

 

【広域自治体長】 民主党はソウルおよび嶺南圏を除く広域自治体長選挙で勝利し、釜山・蔚山・江原道および忠清圏全域を奪還するなど、象徴的な成果を挙げました。国民の力は最後の牙城であるTK(大邱・慶尚北道)においてさえ前例のない挑戦を受け、釜山・蔚山・慶尚南道(釜蔚慶)でも1選挙区の勝利にとどまるなど苦戦を強いられましたが、決定的にソウル・大邱・慶尚南道など主要激戦地で守り切り、面目を保ちました。

 

【補欠選挙】 同時に実施された国会議員の補欠選挙(14議席)では、民主党が9選挙区での勝利にとどまり、改選前から4議席を減らしたものの、依然として国会の過半数議席を維持しました。国民の力は3議席を上積みし、京畿道・平沢乙や釜山北区甲など主要接戦区において野党候補が善戦しました。特に、党指導部との対立の末に無所属として出馬した韓東勲(ハン・ドンフン)候補が有権者の支持を集め、国会入りを果たすこととなりました。

 

【投票率】 憲法改正をめぐる国民投票との同時実施が見送られたにもかかわらず、期日前投票率の高さに支えられ、前回の第8回全国同時地方選挙(2022年)と比べて10ポイント上回る60.9%の投票率を記録しました。李在明政権の高い政権支持率と、選挙終盤における接戦区への関心の高まりが、投票参加を後押ししました。

 

勝敗要因の分析

 

ハネムーン効果 過去のハネムーン地方選挙(第2・7・8回)において与党がいずれも広域自治体長選挙で10議席以上を確保してきた前例が今回も繰り返される結果となりました。政権発足1年目における李在明政権の安定した支持率が、その決定的な背景として作用しました。

 

野党の予想外の善戦 国民の力は、いわゆる「脱尹宣言」にもかかわらず、親尹(尹錫悦前大統領支持派)色の強い候補者の公認が相次いだことで、内紛に揺れました。こうした党内情勢に加え、政権発足1年目の李在明大統領の支持率が約60%と高水準にあったにも関わらず、国民の力がソウルや慶尚南道などで勝利を収め、事前の予想を上回る善戦を見せたとの評価がなされています。

 

終盤における保守支持層の結集 嶺南圏を中心に、選挙終盤にかけて保守支持層の結集が顕著に見られました。国民の力の候補者が伝統的な保守地盤において地域主義に訴える戦略を展開したことが奏功し、2人の元大統領が選挙支援に乗り出したことも一定の要因として作用しました。ただし、釜山北区甲の国会議員補欠選挙において、無所属の韓東勲(ハン・ドンフン)候補が国民の力の公認候補を抑えて当選したことは、国民の力支持層内部の複雑な心理を垣間見せる一場面であったといえます。

 

経済・国民生活問題をめぐる相反する評価 李在明政権の民生支援金、拡張的財政政策、AI・半導体投資といった経済アジェンダに対する評価が、与野党の支持層間で分かれたとの分析がなされています。また、複数の政治的争点(公訴取消しの推進など)が経済・国民生活上の争点とどのように結びつき、世論に影響を与えたのかについても検討する必要があります。

 

政治的意味および含意

 

今回の選挙により、立法府(国会)および行政府(大統領府)に続き、地方政府(広域自治体首長)においても与党が優位を占める政治地形が整うこととなりました。しかしながら、国民の力がソウルや慶尚南道など主要激戦地で守り切り、その他の地域においても与野党の得票率の差が大きくなかったこと、また一部の国民の力強硬派候補が国会入りを果たしたことなどを踏まえると、国民の力としては今後、政府・与党による一方的な政策・立法推進を牽制する一定の動力を確保したといえます。特に、ハン・ドンフン国民の力前代表が無所属で当選し国会入りしたことから、今後の保守陣営の再編が促される可能性が高まりました。このように多様な政治的意味を内包した地方選挙の結果であることから、政府・与党としても、従来のような一方的な独走ではなく、一種のペース調整を図りながら政策・立法を推進する姿勢を見せるものと判断されます。

 

 

II. 今後の政局展望

 

1. 後半期国会の院構成-院内権力図の再編

 

2026年5月、民主党は当選6回を誇るチョ・ジョンシク議員を後半期国会議長候補に選出しました。チョ議員は李在明大統領の核心側近とされ、「6月中の院構成完了、12月中の国政課題関連法案の全面処理」を掲げ、立法を加速させる方針を示しました。地方選挙の結果を踏まえると、民主党による国会支配力は今後さらに強まるものとみられます。

 

院構成協議の焦点

 

常任委員長ポスト独占の可能性 民主党は、国民の力が後半期の院構成協議に応じない場合、18の常任委員長ポストをすべて独占する方針を表明しました。現在、民主党10、国民の力7という構図の下、仮に民主党が全常任委員会を掌握することとなれば、政務委員会や財政経済委員会など、金融・経済関連の常任委員会もすべて与党主導へと移ることになります。

 

法制司法委員長のポストをめぐる主導権 前半期にすでに慣例を破り、法制司法委員長ポストを獲得した民主党は、後半期においても同委員長職の維持を既定路線としています。法制司法委員会は、すべての法案について最終的な体系・字句審査を行う関門であり、与党による同委員会の掌握は、立法の速度と方向性を左右する重要な要因となります。

 

政務委員会・財政経済委員会に関する示唆 「国民の力」が委員長を務めていた政務委員会(金融・公正取引)および財政経済委員会(税制・予算)が、民主党所属の委員長に交代した場合、金融規制・税制・公正取引分野における立法環境が根本的に変わることになります。企業に直接影響を及ぼすこれら常任委員会の権力構図の変化については、注視する必要があります。

 

 

2. 与野党の党大会(8月)-両党内の主導権争い

 

民主党、国民の力、いずれも8月に党大会を予定しており、地方選挙直後から党内各勢力の結集が活発化する見通しです。新たに選出される党代表および最高委員らが、今年の定期国会を主導することになります。

 

民主党内では、鄭清来(チョン・チョンレ)代表の続投を支持する意見と反対する意見が併存しており、地方選挙の公認プロセスで生じた対立や意見の相違を踏まえ、調整型・統合型の指導部を求める声が浮上する可能性があります。現在、民主党の内外では、鄭清来代表のほか、金民錫(キム・ミンソク)国務総理や宋永吉(ソン・ヨンギル)元代表の出馬も公然と取り沙汰されています。地方選挙に続き、党大会においても、李在明政権の成功を支えられる人物が次期党指導部に就くべきだとする、いわゆる「親明(チンミョン)」色の鮮明さを競う構図が再現される可能性が高いとみられます。

 

一方、国民の力においては、張東赫(チャン・ドンヒョク)現指導部の維持・補完論、非常対策委員会への移行論、韓東勲(ハン・ドンフン)復帰論、さらには安哲秀(アン・チョルス)、羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)、元喜龍(ウォン・ヒリョン)らを念頭に置いた中道拡大・首都圏型人材待望論が並立する見通しです。特に、釜山北区甲の補欠選挙で当選した韓東勲(ハン・ドンフン)前代表は、大統領候補としての期待感を背景に、今後の野党再編における求心力の確保に乗り出すものとみられます。

 

 

3.下半期定期国会-改革立法の加速

 

民主党の後半期国会議長候補である趙正湜(チョ・ジョンシク)議員が「前半期に処理しきれなかった88件の法案を速やかに処理する」と表明したことを受け、2026年の定期国会(9〜12月)は、与党の立場からすれば、事実上の「立法総力戦」の局面として展開される見通しです。李在明政権が選挙局面で処理を先送りしてきた争点法案が、一括して処理される可能性が高いとみられます。

 

特に、今回の地方選挙において与党が相当数の広域自治体首長ポストの奪還に成功したことから、こうした民意を追い風に、改革立法を強力に推進するものとみられます。与党の一部からは、今回の選挙結果を国政運営に対する肯定的な評価として受け止めるべきだとの主張も出ており、一部の争点法案についても強く推し進める可能性があります。こうした状況を踏まえ、司法改革第2段階立法(重大犯罪捜査庁の設置、警察監視機構の創設、裁判官人事制度の改編、公訴庁関連法令の整備)をはじめ、商法の後続改正、金融・税制改革関連法案、AI・プラットフォーム規制など、現政権が重点的に推進する課題をめぐる立法動向に備える必要があります。

 

 

4. 大統領主宰の全国市・道知事会議-「第2国務会議」としての機能化

 

与党所属の広域自治体首長が多数当選したことを受け、政府は地方分権の強化を名目に、大統領主宰による広域自治体首長協議体を定例化し、国政運営の中核的なプラットフォームとして活用しようとするものと見込まれます。この協議体は、事実上の「第2国務会議」ないし「拡大国務会議」としての機能を果たし、中央・地方協治の新たなモデルとして提示される可能性があります。政界内外では、現行の「中央・地方協力会議」という名称は維持しつつ、その役割を強化する方策が議論されています。

 

▶ 期待される制度的変化

 

定例化・常設化 月1回または四半期ごとに、大統領主宰の全国広域自治体首長連席会議を定例化し、国務調整室および行政安全部が主管する協議チャンネルと連動するシステムを構築する見通しです。

 

地方分権拡大の仕組みとしての活用 財政分権(地方税比率の拡大)、広域行政権限の移譲、地域特化型規制サンドボックスなどをこの会議体で議論したうえで、今後の政策として立案する経路が整備される見通しです。場合によっては、「地方自治法の全面改正」の後続課題、または並行課題として推進される可能性もあります。

 

立法反映システムの構築 会議体における議論の結果を国務会議への報告事項として制度化し、主要な結論を政府立法または議員立法として迅速に反映する仕組みを構築する可能性が高いとみられます。

 

地方公約履行点検プラットフォーム 各市長・道知事が地方選挙で掲げた主要公約(地域均衡投資、交通・住宅・雇用など)に関する履行状況を定期的に公開し、中央政府による予算支援と連動させるシステムへと発展する可能性があります。

 

 

 

5. 総合展望-下半期政局シナリオ

 

地方選挙の結果を足がかりに、李在明政権と民主党は、下半期の定期国会を「改革完成のゴールデンタイム」と位置づけ、立法総力戦を展開するものと見込まれます。行政府・立法府・地方政府が一体となった連携構造のもと、これまで第一野党である「国民の力」の抵抗により遅れてきた改革課題が、一括して処理される可能性が高まっているといえます。

 

 

 

PART II   분야별 주요 규제이슈 전망

 

I. 金融・資本市場分野

 

地方選挙前の主要な制度変更および政策推進同行

 

地方選挙前まで、政府および金融委員会は、企業のコーポレートガバナンス改善、デジタル資産の制度化、家計債務の安定化、資本市場の活性化という4本柱を軸に、金融・資本市場規制の体系的な整備を進めてきました。すでに施行された主要制度は、2026年下半期以降、実質的な影響を及ぼし始める見通しです。

 

改正商法の本格適用

李政権の第3次商法改正(2026年3月6日施行):取得した自己株式について、原則として取得日から1年以内の消却を義務化

既存保有の自己株式については1年6ヶ月の猶予期間を設定。例外的に保有を認める場合には、定款への明記および株主総会の承認を義務付け。

第1・2次改正との連携:取締役の忠実義務の対象を「会社および株主」へ拡大、大規模上場会社における累積投票制・監査委員の分離選出の義務化など

 

家計債務安定化管理の強化

2026年の家計向け融資の増加率について、管理目標を1.5%水準に設定(4月1日、金融委員会「2026年度家計債務管理方案」)

住宅担保ローンのリスクウェイト(RWA)の下限を引き上げ(15%→20%)。多住宅保有者および規制地域向け融資に対する審査を厳格化

事業者ローンの目的外流用に関する点検を継続

 

資本市場構造の改善および投資家保護

低PBR企業の公開、コスダック市場の二部制への再編を推進(バリューアッププログラムの継続)

不公正取引規制を強化(株価操縦に対する「ワンストライクアウト」制度の導入、通報報奨金の拡大)

情報開示を強化(役員報酬、重大災害、英文開示の拡大)

 

地方選挙後の下半期に予想される政策方向および展望

 

地方選挙(2026年6月3日)後、与党が安定した国政運営基盤を確保した場合、政府・与党は、生産的金融への転換と資本市場の活力向上を本格的に推進する見通しです。すでに整備された制度が実質的に機能し始めることで、企業のコーポレートガバナンス規制の強化とベンチャーキャピタルの供給拡大が、同時並行で進展するものと予想されます。

 

①  コスダック革新およびベンチャーキャピタル供給の拡大

 

国民成長ファンド(5年間で150兆ウォン規模)の本格稼働

BDC(企業成長集合投資機構)の導入および活性化

先端産業・ベンチャー企業を中心とする資金流入の誘導(生産的金融への転換を加速)

 

不公正取引および投資家保護規制の強化

株価操縦に対する「ワンストライクアウト」制裁体系の本格適用

通報報奨金の大幅拡大および空売り制度の改善(機関投資家と個人投資家の取引条件の平準化)

役員報酬・重大災害に関する開示の充実化、英文開示の拡大

 

 

 

II. 公正取引分野

 

最近の制度変更および政策推進動向

 

地方選挙前まで、公正取引委員会は、167名の人員増強や京仁事務所の新設など、前例のない執行インフラの拡充を断行し、課徴金賦課体系の全面的な改編を通じて、法執行の実効性を大幅に強化しました。生活関連物価の安定という政治的アジェンダとも連動し、談合、下請取引、プラットフォーム、大企業集団など、幅広い分野で調査が加速する局面となっています。

 

課徴金賦課体系の全面改編

談合課徴金の賦課率下限:関連売上高の0.5%→10%へ20倍引上げ

市場支配的地位の濫用に係る課徴金上限:関連売上高の6%→20%への引上げを推進

不当支援・トンネリングに係る課徴金上限:160%→300%へ引上げ、繰り返し違反の場合は50%加重

 

▶ 生活物価連動型カルテルの集中調査

石油精製4社(SKエネルギー・GSカルテックス・S-OIL・HD現代オイルバンク)への立入調査開始(2026年3月9日)

砂糖カルテル3社に対し課徴金4,083億ウォンを賦課(2026年2月12日)

小麦粉カルテル7社(関連売上高約5兆8,000億ウォン)の審議手続き開始(2026年2月19日)

 

▶ 下請・技術奪取規制の強化

受注事業者による裁判所への直接差止請求権の新設(2025年12月17日施行)

技術保護監視官制度の導入、職権調査の年2回→3回以上への拡大

韓国型証拠開示制度(ディスカバリー)の導入・立証責任の転換等、下請法改正の推進

 

▶ 大企業集団規制の高度化

公示対象企業集団102グループを指定(2026年5月1日、前年比10グループ増

トンネリング規制対象の持株比率算定における自己株式の除外を推進

不当内部取引に係る課徴金算定方式の整備および脱法行為への課徴金賦課根拠の新設

 

地方選挙後の下半期における予想政策方向および展望

 

地方選挙後は、現在推進中の法制度改編が具体的な立法案として可視化されることで、公正取引規制が質的に一段階飛躍する局面に入るものと見込まれます。

 

①  オンラインプラットフォーム公正化法(プラットフォーム法)の制定 

 

Coupang(クーパン)・Naver(ネイバー)・Kakao(カカオ)など大手プラットフォームによる自社商品の優遇・抱き合わせ販売・最恵待遇要求等、市場支配力濫用行為の法的禁止

デリバリーアプリ手数料上限制の法制化の可能性が具体化

アルゴリズムの透明性確保・スタートアップ保護条項の並行推進

 

②  専属告発権の全面廃止の推進

 

国民300名・事業者30社以上の連署があれば、公正取引委員会を経ずに直接公訴提起が可能

告発要請権を4機関から50の中央行政機関・243の地方自治体へ拡大

さらに広域自治体には告発要請権を超えて直接告発権を付与する方案を検討(朱丙起チュ・ビョンギ委員長、2026年5月31日)→実現した場合、地方自治体が独自に公正取引違反事件を刑事告発できる

公正取引事件の刑事化の加速と、リニエンシー制度の機能低下への懸念が併存

 

③  生活密接4大分野におけるカルテル調査の継続・深化

 

食品・教育・建設・エネルギー分野の談合に対する集中点検の継続

強制調査権の導入および長期・慣行化したカルテルに対する価格再決定命令の新設を検討

 

 

 

III. 租税分野

 

地方選挙後、下半期に予想される政策の方向性と変化

 

下半期における主要な租税政策は、「多住宅保有者および資産家に対する課税の公平性向上」、「1住宅実需要者および生活に配慮した税制改編」、そして「地方財政の自立に向けた財政分権」の三点に集約されます。実際に居住することを目的とした資産は手厚く保護する一方、不労所得および炭素排出に対しては課税を強化する方向で、税制全般の再編が推進される見通しです。

 

不動産税制の改編:1住宅保有者への負担軽減および多住宅保有者への重課維持

1住宅保有者の財産税および取得税負担の軽減:税負担上限制の最高税率を現実的な水準に引き下げることで1住宅保有者の財産税を調整するとともに、生涯初めて住宅を取得する者に対する取得税減免の適用基準を強化する。

多住宅保有者の不動産による不労所得の抑制:多住宅保有者に対する取得税および総合不動産税の重課政策の基調を維持する。義務賃貸期間を満たした住宅賃貸事業者に対する譲渡税重課の適用除外措置を制限する(→多住宅賃貸需要の抑制)

譲渡所得税における居住要件の強化:実際に居住していない高額住宅の保有者については、譲渡税における保有期間控除率を引き下げ、居住期間控除率を引き上げる。

 

▶ 資本市場課税の合理化

暗号資産課税の合理化:暗号資産の譲渡所得を株式の譲渡所得に対する課税のように課税する。投資損失に係る繰越控除の許容を検討する。

株式長期保有特別控除の導入、配当所得の分離課税など、長期投資を誘導する税制を新設する。

 

▶ 環境配慮・カーボンニュートラル誘導のための目的税の新設

炭素税の導入およびエネルギー税制の改編:炭素税を段階的に導入する。既存の交通・環境・エネルギー税および電力基金等との統合を検討する。

排出権取引制度(ETS)における有償割当の拡大:発電業種における温室効果ガス排出権の有償割当比率を段階的に拡大する。

自動車税の改編:現行の排気量基準による自動車税の課税体系を「車両価額+CO₂排出量」基準へ変更することを検討する。

 

小規模事業者支援・生活安定のための税制改編

保育および共働き夫婦向け税額控除の導入:民間育児ヘルパーの利用費用について、教育費控除の形式による税額控除を新設する。

ペット診療費の付加価値税免除:診療項目の標準化および標準報酬制の導入を進め、診療費に課される付加価値税の免除を推進する。

良識ある賃貸人への税制優遇:商業テナントの新規契約において賃料上昇率を5%以内に抑える賃貸人に対し、対象不動産の保有税(固定資産税・総合不動産税等)の優遇措置を付与することを検討する。

賃貸借税額控除の拡充:無住宅の給与所得者および月払い家賃入居者の住居費負担を軽減する。

良心的な賃貸人への税制優遇:商業テナントの新規契約において賃料上昇率を5%以内に抑える賃貸人に対し、対象不動産の保有税(財産税・総合不動産税等)の優遇措置を付与することを検討する。

家賃税額控除の拡充:無住宅の給与所得者および月払い家賃入居者の住居費負担を軽減する。

 

 

 

IV. 労働分野

 

最近の制度変化および政策推進の動向

 

地方選挙前における労働政策は、高齢化への対応、労働市場における保護範囲の拡大、労働時間の短縮、労働組合法改正に伴う後続措置を中心に推進されてきました。とりわけ、定年延長および退職年金の義務化、プラットフォーム従事者・特殊雇用労働者に対する保護の拡充、いわゆる「黄色い封筒法」の施行は、企業の人事・労務体制全般に構造的な変化をもたらす主要な懸案として評価されています。

 

李在明政権の発足以降、労働政策は全般的に「雇用安定性の強化」と「労働権保護の拡充」に重点が置かれており、既存の労働法体制が対応できなかったプラットフォーム従事者や特殊雇用職にまで保護範囲を広げようとする動きが明確になっています。また、人口構造の変化に対応するための定年延長をめぐる議論と、実労働時間短縮政策が並行して進められていることから、企業の立場では、人件費負担、労使関係、組織運営のあり方全般を再点検することが求められる局面が到来しつつあります。

 

▶  定年65歳への段階的引き上げに向けた立法推進

本施策は、李在明政権の国政課題であるとともに、共に民主党の地方選挙における核心的公約として位置づけられており、超高齢社会への突入に対応するための代表的な労働政策として推進されています。

定年65歳への引き上げ時期をめぐっては、2036年案・2039年案・2041年案が議論されており、業種および企業規模に応じた段階的適用方案も併せて検討されています。

労働界が早期立法を求める一方、経営界は賃金体系の改編との同時実施を主張しており、地方選挙後に労使政三者協議が本格化する見通しです。

 

▶  退職年金の全面義務化の推進

2026年2月の労使政タスクフォース(TF)共同宣言を通じて、退職年金の全面義務化を推進するという原則について合意がなされました。

事業場の規模および制度受容能力を考慮した段階的な義務化方案が検討されており、中小企業向けの支援対策についても併せて議論が進められています。

政府・与党ともに年内の立法意志を表明しており、他の労働立法に比べて実現可能性が高い課題として評価されています。

 

▶  労働法の適用範囲の拡大推進

労働者推定制度の導入を通じて、特殊雇用・プラットフォーム従事者の権利救済手続きを強化する方案が議論されています。

「働く人の権利保障基本法」の制定を通じて、雇用形態にかかわらず基本的な労働権の保障を拡充する方向での推進が図られています。

5人未満の事業場に対する労働基準法の適用拡大が検討されており、労働法による保護の盲点解消が主要な政策課題として浮上しています。

 

▶  実労働時間短縮に向けた立法パッケージの推進

包括賃金制の誤用・濫用防止および長時間労働慣行の改善に向けた制度改善の議論が継続しています。

労働時間の記録義務化を通じて、実際の労働時間の管理・監督体制を強化する方向での推進が図られています。

「つながらない権利」の導入検討とあわせて、労働者の休息権保障のための立法議論が拡大しています。

週4.5日制の試験的実施を公共部門を中心に拡大し、長期的には民間への普及可能性についても検討されています。

 

▶  改正労働組合法(黄色い封筒法)の施行

2026年3月の施行以降、請負企業の労働組合から発注企業に対する団体交渉要求が急激に増加しています。

発注企業の使用者性の認定をめぐる労働委員会の事件および法的紛争が急速に増加する傾向にあります。

使用者性の認定範囲および団体交渉義務の範囲に関する判例が蓄積されつつある、法理形成の段階に入っています。

 

地方選挙後、下半期に予想される政策の方向性と展望

 

地方選挙後に与党が立法の主導権を強化した場合、労働分野では労働者寄り・保護拡充の基調がさらに強まる見通しです。とりわけ、定年延長、労働法の適用範囲の拡大、労働時間の短縮、労働組合法に関連する後続立法が並行して推進されることで、企業の人事・労務体制全般に相当な変化が生じることが予想されます。

 

与党は今回の地方選挙の結果を踏まえ、労働市場改革の課題を本格的に推進する可能性が高く、労働界もまた、定年延長と労働権拡充立法を強く求めています。一方、経営界は人件費の上昇と企業競争力の低下に対する懸念を継続的に提起しており、今後の立法過程においては、労使間の利害関係の調整が最大の変動要因として機能するとみられます。ただし、国会で与党が優勢を占めていることから主要な労働立法の相当部分が現実化する可能性が高いとの見方が多いです。

 

▶  定年延長および高齢者雇用体制の改編

法定定年を65歳へ段階的に引き上げる立法が再推進されるとともに、業種および企業規模に応じた段階的施行方案が併せて議論される見通しです。

定年延長に伴う人件費負担の軽減を目的として、賃金体系の改編および賃金ピーク制の整備に関する議論が並行して行われる可能性があります。  

高齢労働者の比率増加に伴い、採用・昇進・人材運営体制全般にわたる構造的な変化が予想されるとともに、世代間の人材配分問題も主要な課題として浮上しています。

 

▶  退職年金義務化の本格的推進

事業場の規模別による段階的義務化方案が具体化されるにつれ、関連する立法議論が加速する見通しです。

基金型退職年金の導入をめぐる議論が拡大しており、労使共同運営体制に対する関心が高まっています。

企業の積立負担が拡大するにつれ、中小・中堅企業を中心に財務的影響の検討が本格化することが予想されます。

 

▶  労働法による保護範囲の拡大

特殊雇用・プラットフォーム従事者に対する労働法上の保護拡充が、主要な立法課題として推進される見通しです。

労働者推定制度の導入により、使用者側の立証責任が強化される可能性があります。

5人未満の事業場に対する労働法の適用拡大に関する議論が現実化するにつれ、産業全般にわたる労務管理の基準が引き上げられることが予想されます。

 

▶  労働時間短縮政策の拡大

包括賃金制に対する規制強化および労働時間の記録義務化立法が本格的に推進される可能性があります。

「つながらない権利」の導入をめぐる議論が拡大するにつれ、企業の業務指示および勤怠管理の方法にも変化が生じることが予想されます。

週4.5日制の試験的実施が公共部門を中心に拡大され、将来的には民間部門へ普及する可能性があります。

 

▶  労働組合法施行後の後続紛争の増加

発注企業の使用者性の判断に関連する労働委員会および裁判所の判例が本格的に蓄積される見通しです。

団体交渉義務の範囲および交渉対象の拡大の可否をめぐる紛争の増加が予想されます。

発注(元請け)・請負(下請け)構造を活用する製造・建設・プラットフォーム産業を中心に、労使関係リスクが拡大する可能性があります。

 

 

 

Ⅴ. 司法改革

 

2026年3月、再審査請求制度の導入(憲法裁判所法)、法歪曲罪の新設(刑法)、大法院裁判官の増員(裁判所組織法)を柱とする司法改革3法が改正されました。三つの法案はそれぞれ、憲法裁判を通じた裁判統制の強化、捜査・裁判過程における公正性の担保、上告審の専門化・効率化という方向性を目指しています。しかし、憲法裁判所と大法院の間の権限衝突、法歪曲罪の違憲の懸念および司法府萎縮効果、下級審における人材の空洞化など、少なからぬ議論と副作用も予想されています。今後、憲法裁判所における再審査請求の認容事例が蓄積されるほど、両機関間の対立が顕在化し、法歪曲罪による検察の保守的な起訴傾向は、企業経営リスクを高める方向に作用する可能性が高いとみられます。

 

1. 再審査請求制度(憲法裁判所法の改正)

 

▶  改正内容

憲法裁判所法第68条第1項の「裁判所の裁判を除いては」という文言の削除→確定判決も憲法訴願(憲法裁判所への申立て)の対象に含まれることとなりました。

第68条第3項の新設により、申立て事由が以下の3つに限定されました。

① 憲法裁判所決定に違反した裁判

適法手続きに違反した裁判

憲法・法律違反による明白な基本権侵害

 

▶  現状

施行初日(2026年3月12日)に20件が受付され、2週間以内に153件が受付されました。

年間1万件~1万5,000件の追加受付が見込まれます(従来比3~5倍)。

憲法裁判所は、初期に26件を全件却下するなど、厳格な事前審査の基調を維持しています。

現在、5件が全員裁判部に回付され、本案審理が進行中です。

 

▶  展望および企業への影響

大法院・憲法裁判所の関係:並列的な協力 → 憲法裁判所優位の垂直的な牽制構造へと転換予想

企業にとっては「両刃の剣」:確定判決の取消しリスク vs 追加の不服申立手段の確保

大規模紛争において、再審査請求を戦略的(手続き遅延)に活用する可能性があります。

憲法的正当性を前面に掲げる対応戦略の重要性が一層高まっています。

 

2. 法歪曲罪(刑法第123条の2の新設)

 

▶ 改正内容

刑事事件に関与した裁判官・検察官・捜査官が、違法・不当な利益の提供または権益侵害を目的として、下記の行為を行った場合、10年以下の懲役・資格停止に処されます。

法令の意図的な歪曲適用・不適用(合理的な裁量判断は除く)

証拠の隠滅・隠匿・偽造・変造またはその使用

違法な証拠収集、または証拠なき犯罪事実の認定

なお、直前の修正により適用範囲が刑事事件に限定され、故意の要件が強化されました。

 

▶  現状

施行後、告訴・告発件数が増加傾向にあります。

起訴意見での検察送致事例は、現時点では確認されていません。

違憲の懸念が完全に解消されているかどうかについて、法曹界からの批判が継続しています。

 

▶ 展望および企業への影響

「萎縮効果」:裁判官・検察官による積極的な法解釈が委縮するおそれがあります。

検察による機械的・保守的な起訴傾向の強化→経営陣の背任・横領事件化が増加する可能性

企業対応:経営判断の合理性に係る根拠を先手を打って記録・文書化する体制の整備が必要です。

捜査・裁判の全過程において、基本権保障の観点からの適法性点検が求められます。

 

3. 大法院裁判官の増員(裁判所組織法の改正)

 

▶ 改正内容

2028年から毎年4名ずつ3年間にわたり、合計12名を増員します。

2030年に最終的な26名体制が完成します。

金融・知的財産権・労働等の専門法廷運営の根拠が整備されます。

 

▶  現状

現行の大法院裁判官12名が年間約4万1,732件を処理(1人当たり約3,478件)

審理不続行決定の乱発により、「事実上の2審制」との批判が積み重なっています。

 

▶ 展望および企業への影響

小部3つ → 6つへと拡大、専門部新設→企業に関連する複雑事件の専門的な審理が強化されることが期待されます。

裁判部間の判決不一致および判例の一貫性低下のリスクが生じます。

裁判研究官を約101名追加必要→下級審における部総括判事級の人材空洞化が懸念されます。

悪循環構造:大法院研究官の増加→下級審の人材不足→下級審の遅延・質的低下→大法院の負担の再増大

企業:変化した審級環境に対応した段階別の訴訟戦略の再構築が必要

 

 

 

VI. 検察改革

 

検察改革の一環として、捜査機関と公訴機関の間で相互に牽制が可能な体制を構築するため、検察庁を廃止し、法務部長官所属の公訴庁および行政安全部長官所属の重大犯罪捜査庁をそれぞれ設置することを内容とする公訴庁法および重大犯罪捜査庁法が制定され、施行を目前に控えています。法の支配における核心的価値である「抑制と均衡」を実現するためのやむを得ない措置であるとの評価がある一方、捜査能力の低下を懸念する声も交錯する中で、立法府の決断が下されたものです。1954年の刑事訴訟法制定以来、70年あまりにわたり維持されてきた検察の直接捜査権が廃止される段階に入ったことで、捜査と起訴の「物理的・制度的な完全分離」が実現されることになるとの評価がなされています。

 

1. 検察の補完捜査要求権

 

このように検察改革が最終段階に差し掛かる中、地方選挙後まで議論が先送りされてきた公訴庁検察官への補完捜査(要求)権の付与問題が、依然として大きな懸案事項として残っています。政府の公訴庁設置案は、検察官に補完捜査権を認めることで起訴の正確性を高めようとするものですが、これは捜査と起訴の完全分離を主張する政界の強い反対に直面しています。結果として、補完捜査権の存置の可否が、今後の検察改革の実質的な成否を左右する最大の争点として浮上するとみられます。

 

2. 重大犯罪捜査庁の新設

 

重大犯罪捜査庁は、2026年10月2日の法施行に伴い新設される予定であり、政府は現在、同年4月30日より重大犯罪捜査庁開庁準備団を発足させ、段階的に準備課題を推進しています。汚職・経済・防衛産業・麻薬・内乱外患・サイバー犯罪の6大重大犯罪に対する捜査権が付与されることから、現在検察が有する証券金融・公正取引・企業犯罪等に関する捜査権限は重大犯罪捜査庁へ大幅に移管されるとともに、証券先物委員会や公正取引委員会等、6大犯罪領域における機関からの告発も、今後は重大犯罪捜査庁長あてに変更される見通しです。

 

3. 公訴庁への転換

 

公訴庁は、捜査権を持たないとしても、令状請求権および起訴権を根拠として司法統制機能を強化することが予想されます。米国の場合、法律上、検察官に捜査指揮権は存在しませんが、検察が違法な捜査を指摘した場合には多額の損害賠償問題に発展する可能性があるため、警察が自発的に検察官の助言を受けることが実態となっています。公訴庁の検察官もまた、捜索差押令状および逮捕令状の棄却決定、不起訴決定を通じて、捜査の違法性や法令適用の誤りを具体的に指摘する形で、司法統制機能を強化する可能性が高いとみられます。

 

4. 特別司法警察の役割拡大

 

一方、公訴庁検察官の特別司法警察官吏に対する捜査指揮権も廃止されることから、各省庁に分散している特別司法警察の捜査開始および強制捜査権限も拡大される見通しです。公訴庁検察官による特別司法警察への捜査指揮権の廃止は、結果として、特別司法警察による実績重視の捜査開始およびコントロールタワー機能の不在の中で、各省庁が同時多発的に捜査を開始することにつながり、ひいては捜査権の濫用および過剰捜査という弊害をもたらす可能性があります。現行の検察官指揮という「法理的な緩衝地帯」の消滅により、司法上のフィルタリング機能が事実上失われ、大多数の事件が起訴意見として送致される可能性が高まることから、企業にとって新たな負担が生じることとなります。

 

5. 移行期における対応上の懸念

 

また、検察庁廃止前までの間、検察は多くの未解決事件を処理するため、重要事件については捜索差押えなどの強制捜査に着手する事例が増加するものと見込まれます。さらに、重大犯罪捜査庁が本格的に発足した後は、既存の警察との捜査主導権をめぐる競争が激化することで、企業の司法リスクはかつてないほど高まることが予想されます。したがって企業としては、既に立件されている企業関連事件の動向を注視するとともに、複数の主要捜査機関それぞれに対する対応方針を新たに確立しなければならない状況に置かれています

 

 

 

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