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【韓国】 刑事訴訟法改正の公布案を国務会議で決定

  • ニュースレター
  • 2026.08.24

2026年7月31日に韓国の国会本会議で可決された刑事訴訟法一部改正法律案の公布案が、8月4日、日本の閣議に相当する国務会議で決定されました。「公訴庁法」及び「重大犯罪捜査庁法」の施行に合わせ、2026年10月2日に施行される予定の今回の改正は、検察官の直接捜査権及び直接補完捜査権を全面的に廃止し、捜査の主体を司法警察官に一元化することを柱とするものであり、刑事手続に関する広範な変更を含んでいます。

 

2020年以降進められてきた「捜査と起訴の分離」を骨子とする刑事司法制度の改編立法は、今回の改正により完結することになります。公訴庁及び重大犯罪捜査庁の発足と相まって、刑事司法手続全般が新たなパラダイムへと移行することになります。

 

本ニュースレターでは、刑事訴訟法改正の経緯及び主要内容を概観したうえで、企業実務に及ぼす影響とその対応策について考察します。

 


1. 刑事訴訟法改正の経緯

2. 改正刑事訴訟法の主な内容

3. 変更後の制度概要図

4. 実務上の変化と対応

5. おわりに


 

1. 刑事訴訟法改正の経緯

 

2026年3月24日、「公訴庁法」(法律第21490号)及び「重大犯罪捜査庁法」(法律第21491号)が制定されたことに伴い、捜査と起訴の分離という新たな刑事司法制度を支える刑事訴訟法改正などの後続立法の必要性が提起されました。

 

これを受け、与党は2026年7月9日、金翰奎(キム・ハンギュ)議員の代表発議により、刑事訴訟法一部改正法律案を法制司法委員会に提出しました。同委員会は、同案を含む10件の刑事訴訟法一部改正法律案の内容を反映し、修正した代替案を提案しました。

 

当該代替案は、2026年7月31日、国会本会議で原案どおり可決され、同年8月4日に国務会議(日本の閣議に相当)で審議・議決されました。大統領の裁可及び公布を経て、約2か月後の同年10月2日に施行される予定です。

 

改正の主要な方向性は、① 検察官の補完捜査権を含む直接捜査権の廃止、② 検察官の補完捜査要求権の実質化、③ 捜査結果に対する不服・異議申立手続の整備、④ 特別司法警察官に対する統制構造の再編です。

 

 

2. 改正刑事訴訟法の主な内容

 

ア.検察の捜査に関する事項

 

1) 検察官の直接捜査権の根拠規定の削除

 

今回の改正の中核は、検察官が直接捜査を開始し、遂行する法的根拠である現行刑事訴訟法第196条(検事の捜査)を削除する点にあります。

 

これまで検察庁法及び同法施行令に基づき、例外的に認められていた腐敗犯罪・経済犯罪等に対する検察官の直接捜査も、今後は認められなくなります。これらの事件は、警察・重大犯罪捜査庁及び高位公職者犯罪捜査処がそれぞれの管轄に応じて担当することになります。

 

2) 検察官による直接補完捜査の禁止及び補完捜査要求権の実質化(第197条の2)

 

すべての事件について、検察官による直接補完捜査が禁止され、検察官は、司法警察官に補完捜査を要求する方法によってのみ、捜査に関与することができます。

 

司法警察官は、原則として、検察官による補完捜査要求の日から1か月以内に補完捜査を完了しなければなりません。ただし、検察官が相当な理由があると認める場合には、1か月の範囲内でその期間を延長することができます。一方、公訴時効が迫っている緊急事件など、特別な事情が認められる事案については、補完捜査期間を短縮することもできます。

 

また、補完捜査要求の適切な履行を確保するため、司法警察官が正当な理由なく補完捜査要求に従わない場合には、改正前から認められていた職務排除又は懲戒要求に加え、他の捜査機関を指定して補完捜査を実施させることができる根拠規定も設けられました。

 

このように、検察官による直接補完捜査は禁止される一方で、補完捜査要求権を実質化するための規定が法律上明文化されました。これにより、捜査の空白を防ぎ、補完捜査が実効的に行われるようにすることが企図されています。

 

3) 検察官による事実関係の確認及び告訴人等の面談申請権(第245条の13)

 

検察官は、公訴提起又は再捜査要求の要否を判断するため、又は公訴を維持するために必要な場合には、被疑者・参考人その他の事件関係者等から意見を聴取し、又は関連資料の提出を受ける方法により、事実関係を確認することができます。この場合において、被疑者の意見を聴取するときは、弁護人の立会いなど、弁護人の援助を受ける権利を保障しなければなりません。

 

また、告訴人・告発人・被害者又はその法定代理人(以下「告訴人等」といいます)は、検察官に面談を申請し、意見を陳述することができます。

 

ただし、上記の事実関係の確認及び告訴人等との面談は、捜査として認められるものではないため、これにより取得した陳述や資料を裁判で証拠として使用することはできません。

 

4) 逮捕・勾留令状請求前の被疑者面談(第201条第7項、第8項)

 

検察官は、司法警察官が申請した逮捕・勾留令状について、その必要性など、令状請求の要否を判断するために必要な場合には、被疑者と直接面談し、又は司法警察官に意見の提示を求めることができます。

 

これは、検察官の直接捜査権が廃止されることに伴い、検察官が逮捕・勾留令状の請求の要否を判断する過程で活用できる事実確認手段を明文化したものです。

 

5) 検察官への意見要請制度(第195条第3項)

 

司法警察官は、捜査に関連して、法律上の判断や証拠収集の適切性などについて、検察官に意見を求めることができます。事件内容に関する法理上の判断、証拠能力その他の手続的適法性について、司法警察官が捜査段階から検察官の意見を公式に求め、これを捜査に活用するための仕組みが設けられたものといえます。

 

 

イ. 警察捜査に関する事項

 

1) 押収・捜索・検証の映像録画(第220条の2)

 

司法警察官は、令状に基づき、又は令状によらない強制処分として押収・捜索・検証を実施する場合、強制捜査の開始から終了までの全過程を撮影・録画しなければなりません。押収・捜索・検証を受けた者に加え、被疑者・被告人及びその弁護人には、当該映像記録の閲覧又は複写を申請する権利が付与されました。

 

2) 被疑者取調べ等の録音(第244条の6第2項)

 

被疑者の供述を映像録画する場合を除き、司法警察官は、あらかじめ録音する旨を告知したうえで、被疑者取調べの全過程を録音することができます。また、被疑者又は弁護人から要請があった場合には、被疑者に対する取調べ又は面談等における供述を録音しなければなりません。

 

3) 告訴人等による異議申立(第245条の11)

 

捜査結果に対する異議申立とは別に、捜査の進行中にも異議を申し立てることができる制度が導入されました。

今後、告訴人等は、6か月以上にわたり正当な理由なく捜査が遅延している場合、司法警察官吏により告訴人等の権利が侵害された場合、その他違法又は不当な捜査行為がある場合には、捜査官署の長に異議を申し立てることができます。
 

4) 捜査機関間の捜査競合の調整(第197条の4)

 

警察、重大犯罪捜査庁、高位公職者犯罪捜査処等へと捜査機関が多元化することに伴い、同一事件について複数の機関による捜査が競合する可能性が高まりました。このような問題を解消するため、捜査機関間に捜査権管轄調整協議会を設置し、捜査機関の長が、競合する事件の管轄について協議又は調整を申請できるようにしました。

 

 

ウ. 検察・警察の捜査に対する不服申立制度に関する事項

 

1) 警察捜査結果に対する不服申立

 

ア) 不送致決定に対する異議申立権者の拡大(第245条の7第2項)

従来、異議申立が認められていなかった告発事件についても、告発人が被誣告者である場合など、当該事件と直接的な利害関係を有し、犯罪被害者に準ずる場合であって、大統領令で定める犯罪に限り、不送致決定に対して異議申立権が付与されました。

 

イ) 捜査関係記録の閲覧・謄写権(第245条の12)

上記の告発人を含む告訴人等は、異議申立を行うため、司法警察官又は検察官に対し、捜査関係記録の閲覧又は謄写を申請することができます。

ただし、司法警察官又は検察官は、共犯者による証拠隠滅・逃亡のおそれがある場合、事件関係者の名誉又は私生活上の秘密を侵害するおそれがある場合など、一定の場合には、これを不許可とすることができます。また、許可する場合であっても、使用目的を制限し、又は条件を付すことができます。さらに、告訴人等又はその弁護人が上記の制限に違反し、捜査関係記録を第三者に交付又は提示した場合に処罰する規定も併せて新設されました。

 

ウ) 異議申立期間の制限(第245条の7第3項)

従来、法令上別段の規定がなく、告訴人等はいつでも異議申立を行うことができましたが、今回の改正により、異議申立は、原則として、捜査機関による不送致決定の通知を受けた日から3か月以内に行わなければならないものとされました。

 

2) 検察官の不起訴処分に対する裁定申請権者の拡大(第260条)

 

従来、刑法第123条から第126条までの罪(職権濫用、法歪曲、不法逮捕及び不法監禁、特別公務員による暴行・陵虐行為、被疑事実公表罪)に限り認められていた告発事件に関する裁定申請の対象範囲が、社会的弱者を対象とする犯罪である家庭内暴力犯罪、高齢者虐待関連犯罪、児童・青少年を対象とする性犯罪、児童虐待犯罪及び障害者虐待関連犯罪にまで拡大されました。ただし、拡大後の裁定申請対象犯罪について申請主体となる告発人は、各該当法令において通報義務を負う者に限定されています。

 

 

エ. 特別司法警察官(以下「特司警」といいます)の捜査に関する事項

 

1) 検察官による指揮関係の廃止及び相互協力関係への転換(第245条の10)

 

従来の特司警に対する検察官の捜査指揮権を廃止し、司法警察官の場合と同様に、両機関の関係を相互協力関係へと転換しました。これにより、検察官の司法警察官に対する補完捜査要求、是正措置要求等に関する規定が、特司警にも適用されることになりました。

 

もっとも、法律及び捜査に関する専門性を有する検察官による特司警への積極的な指揮・助力の拡大を求める意見を反映し、特司警については、検察官が要請を受けた場合又は必要がある場合、特司警に対して指導・助言することができる旨の規定も設けられました。

 

2) 特司警の全件送致義務の維持(第245条の10第5項)

 

立法過程では、特司警についても司法警察官と同様に全件送致義務を廃止し、送致の要否に関する判断権限を付与して、不送致決定を行えるようにすべきではないかという議論がありました。しかし、最終的な判断に伴う負担があるとの現場の特司警からの要望を反映し、全件送致義務が維持されることになりました。

 

したがって、特司警による捜査事件は、司法警察官の場合とは異なり、嫌疑の有無にかかわらず、すべて検察に送致され、検察官が最終処分を決定することになります。

 

 

3. 変更後の制度概要図

 

 

 

 

4. 実務上の変化と対応

 

ア. 各段階の手続に応じた専門的対応の重要性の増大

 

捜査と起訴が分離された制度の下では、捜査機関が形成した事件の初期フレームが、検察官による公訴判断段階にまで影響を及ぼす度合いが一層大きくなるものと予想されます。したがって、事実関係を積極的に疎明すること等を含め、捜査機関との適時のコミュニケーションが、事件全体の方向性を左右する中核的な要素となります。

 

さらに、初期捜査段階における防御論理は、その後の公訴提起の要否の判断及び公判過程における弁護戦略の基礎となります。したがって、事件初期から刑事実務に精通した専門人材による体系的な支援の下、争点となり得る法理上の問題及び事実関係を検討し、主要資料を分析したうえで、今後予想される捜査の方向性をあらかじめ把握し、これに備えることが何より重要です。

 

また、公訴庁による起訴の要否の検討段階では、改正刑事訴訟法第245条の13に基づく意見書の提出等、検察官による事実関係の確認及び告訴人等との面談制度を積極的に活用し、直接捜査が制限されることにより事案の把握が容易ではなくなった検察官との接点を広げ、捜査結果に反映されなかった立場を説得的に疎明する必要があります。捜査と起訴の分離により、むしろ公訴庁による警察捜査に対する統制機能は、従前に比べてより厳格に働く可能性が高いと考えられるため、改正法施行後も、公訴庁への対応は引き続き重要になるものと予想されます。

 

要するに、捜査と起訴の分離に伴い、警察による捜査と公訴庁による起訴検討という二つの段階のそれぞれに応じた対応戦略が必要になるといえます。

 

 

イ. 制度改編直後における捜査機関の専門性低下への懸念と対応

 

改正制度の施行初期において、各捜査機関の人員及び組織が定着していく過程で、金融、会計、公正取引等の複合的な争点を有する企業犯罪捜査の専門性低下が現実化する可能性があります。特に、重大犯罪捜査庁は、腐敗犯罪、経済犯罪、選挙犯罪、防衛事業犯罪等を直接捜査する機関として設計されていますが、これらの分野について豊富な捜査経験を有する従来の検察官出身者等の人材を十分に確保できるかについては、なお不確実です。

 

優秀な捜査人材の確保に困難を抱えた高位公職者犯罪捜査処の発足初期における捜査専門性をめぐる議論は、このような懸念を裏付けるものです。特に、制度改編の初期には、

 

各捜査機関において、証拠収集をはじめとする捜査手続全般に関する専門性の蓄積に一定の時間を要することは避けられません。そのため、企業としては、特に捜査手続違反に関する問題について、初期段階から迅速かつ的確に対応する必要があります。

 

また、改正刑事訴訟法第220条の2により、押収・捜索・検証の全過程について映像録画が義務化され、当該映像記録の閲覧・謄写を申請できるようになることから、捜査機関による強制処分の過程で手続上の違法が認められる場合には、準抗告等を通じて事後的に争う実益が一層高まるものと予想されます。

 

ウ. 捜査遅延及び不起訴処分の増加への懸念と対応

 

公訴庁の検察官は、捜査機関が送致した記録に基づいて起訴の要否を判断し、補完捜査が必要な場合であっても、自ら直接捜査を行うのではなく、捜査機関に補完捜査を要求する方法によってのみ捜査に関与することになります。

 

従来3か月とされていた補完捜査要求の処理期間は、改正刑事訴訟法において、原則として1か月に短縮されます。処理期間の制約により、不十分又は不完全な捜査が増加し、補完捜査要求とその履行が公訴庁と捜査機関との間で繰り返される事態が深刻化するおそれがあります。

 

公訴維持のために必要な十分な捜査が行われない場合、検察官による不起訴処分が増加する可能性があります。そのため、告訴人・告発人としては、最初の告訴・告発段階から、犯罪の嫌疑を裏付ける説得的な法理構成と必要な証拠を併せて提出し、捜査機関が事件の核心的争点及び証拠関係を正確に把握した状態で捜査を開始できるようにする必要があります。 また、不送致決定を受けた場合には、異議申立期間が原則として通知受領日から3か月以内に制限される点を踏まえ、不送致通知を受け次第、異議申立の根拠となる論理及び追加証拠を速やかに準備する必要があります。現行制度に比べ、弁護人による積極的な対応及び努力の重要性が一層高まったといえます。

 

 

5. おわりに

 

今回の刑事訴訟法改正は、2020年以降段階的に推進されてきた「捜査と起訴の分離」という刑事司法改革の、手続法上の完成を意味するものです。検察官の直接捜査権の全面廃止を中核とする今回の改正により、単なる手続上の変更にとどまらず、企業を取り巻く刑事リスク管理戦略全般の根本的な再設計が求められます。

 

何より注目すべき点は、捜査初期段階における対応が、事件全体の帰趨を決定づける重要な要素となったことです。従来は、検察官が捜査過程に直接関与し、事件の内容を把握する過程を通じて法理上の判断を調整することができました。しかし、今後は、司法警察官が形成した事件の構造が、その後の公訴庁による起訴判断にまで、事実上影響を及ぼすことになると考えられます。

 

したがって、事件初期から、捜査実務に精通した専門人材による体系的な支援の下、捜査機関が法理上の争点及び事実関係を正確に把握できるよう、十分な資料と説得力のある論理を早期かつ能動的に提示する戦略が、効果的な対応となります。

 

刑事司法パラダイムの転換は、企業の刑事リスク管理の在り方も大きく変えることになります。新たな刑事司法制度の2026年10月2日からの本格施行を控え、今こそ、企業の刑事対応戦略全般を点検し、新制度に即した対応力を構築すべき時期です。

 

 

和友の企業刑事対応戦略センター(CCDSC)は、刑事分野に精通した専門家及び関係機関で多様な実務経験を積んだ人材により構成されており、企業関連の刑事問題について、対応戦略の策定・実行をワンストップで支援する総合的な専門組織です。刑事分野に関するあらゆる法律問題に迅速に対応できるよう、関連する法的課題をあらかじめ整理してご説明し、適時適切なサポートを提供いたします。本件に関してご質問等がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

 

[Korean Version]

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